物語の基本となる転写
●胎内における対幻想=<時点ゼロの双数性>
胎児期の自己とシンクロ率100%である母(体)は他者性ゼロ。
母の胎内にある胎児は完全なる対幻想=<時点ゼロの双数性>の状態です。 母子の関係は自他不可分であり、相互に全面肯定であるハズという認識を前提としています。
ここでは4つの要素からなる2つの関係がそれぞれ不可分に存在しています。
母 ← → 子
栄養 ← → 情報
母の精神的・身体的な状態はすべて子に影響します。
母が摂取する栄養が足りなければ子への栄養の供給も足りなくなり、
母がストレスを受ければ、ホルモンなどの代謝レベルで子へ影響します。
母子が不可分であるほど、母の状態はそのまま子に転写します。この段階では情報はホルモンなど分子レベルのやりとりそのものだと考えられます。
母の意識および無意識の状態が転写されます。
母の<意識>も<無意識>も、子の<無意識>として形成されます。
●母からの<転写>という基本
母の状態は子に転写されますが、そのまま全部が転写されるわけではありません。
あるいは転写された領域がすべてではありません。
母の状態がそのまま転写される部分と、そうでない部分の2つの領域が生じます。
その2つの領域をもつ無意識あるいは無意識の2つの領域が生じるといえます。
つまり2つの領域というギャップまたは<二重性>が無意識のなかに生じます。
●マイナスの<転写>という問題
母がストレスを受けた場合、そのストレスによるマイナスの影響はそのまま子へマイナスの影響として転写されます。
母から子に対してマイナスの影響があった場合、2つの問題が生じます。
マイナスの傾向がそのまま転写させられる。
マイナスに反発する力動が生じる可能性。
母の影響は胎児の感受性とも関係があるので、実際には複雑です。
サリドマイドのようにある時期の胎児に多大な異常をもたらすものも、その感受性がある時期以外では障害を起こさないものもあり、刻一刻と変化する胎児の感受性とそれへの影響は最終的にどのようなかたちになるかは重層的な非常に複雑な過程を経ています。
●<転写>の基本条件
子の遺伝子は母と父の遺伝子を半分づつ継承してできています。
母の状態が子へ転写するときに、子の遺伝子が母の遺伝子と全く同じであれば、同じ反応や、ある<状態>が同じように転写することが考えられます。
しかし、実際は子の遺伝子の半分は父の遺伝子であり、母の状態やその転写に対する反応は、さまざまだと考えられます。
父からの遺伝子は基本的な変数として考えられます。
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コメント
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生命と記憶の基本を遺伝子の自己複製とし、複製を前提とした情報を記憶の起源とし、それこそが<心>の起源であるとした『心の起源』(木下清一郎)という本があります。三木成夫の解剖学は吉本理論に大きな影響を与えていますが、この『心の起源』も分子生物学と吉本理論をつなぐ内容でもあり、とても参考になります。
遺伝子の転写は分子レベルの現象ですが、そこからの遠隔化として存在する観念の現象として考えられるものは以上のようなエントリーが考えられます。
親子の転写継承の関係に宗教的な意味を見い出した吉本さんの親鸞解釈はウルトラのようでいてまったくクールな科学的な認識であるといえるものでしょう。
投稿: NOB | 2013年4月12日 (金) 16時58分