物語のはじまるトコ/ボクが読んだ<吉本隆明>

2013年9月22日 (日)

物語の2つの方向性

●基本となる2つのベクトル

 物語の原初の論理は2つの志向性として生成します。

 吉本理論のようにフロイト的に語れば、基本的にはエスから自我が離脱(しようと)するベクトルと、エスへ回帰しようとするベクトルの2つ。
 別の面からみれば、それは観念が自律しようとすることに対して<YES>と<NO>のスタンスがあるということです。YESとは観念が自らの生成を育み個として自立しようとするベクトルであり、NOは個以前の状態への回帰、エスへの回帰。
 このエスへの回帰は<(人)類>としての存在への回帰だともいえます。

 おそらくこの<YES>と<NO>というスタンスは、やがて<イナイイナイ・バア>として発現、表現され、その後のすべての認識の基本となっていくもの。文字どおりの<YES・NO>として、行動や思考や言語の根幹を左右し展開していくものと考えられます。


●死という最大のイベント

 エスからの離脱が始まった時点(つまり個体生命として存在した時点)で、すでに自我が迎えなければならない最大のイベントととして死があります。

 原初のベクトルはエスからの離脱をめぐるものでしたが、生を獲得してしまった以上、その終わりである死が究極のイベントであり、すべてのベクトルが死に対する何らかのカウンターとして生成するものだと考えられます。フロイト-ラカン的にいえば死は最大の去勢であり、すべての生はこの去勢との反作用としての営みだといえます。


●イベントに対応する物語

 この死を最大のイベントだとして考えたE・キューブラー・ロスという人がいます。その著書『死ぬ瞬間』では死を極限とした事件に対して人間がどのような認識をもつか、その原型が臨床における具体的な孝察の結果として示されています。
 ロスによれば、それが物語の原型としての7段階です。

 吉本さんはそれを援用し、そこに母の物語とのかかわりを導入して考察することでオリジナルな物語論?の基本を作りました。
 つまり、人間がストレスに対してどう対応するかという基本形に、そのストレスから自分を救済してくれる原型としての母の物語(母による養育・擁護を基本とする)をバイアスとして導入したと考えられます。

2013年4月12日 (金)

物語の基本となる転写

●胎内における対幻想=<時点ゼロの双数性>

 胎児期の自己とシンクロ率100%である母(体)は他者性ゼロ。
 母の胎内にある胎児は完全なる対幻想=<時点ゼロの双数性>の状態です。 母子の関係は自他不可分であり、相互に全面肯定であるハズという認識を前提としています。
 ここでは4つの要素からなる2つの関係がそれぞれ不可分に存在しています。


   母 ← → 子
   栄養 ← → 情報


 母の精神的・身体的な状態はすべて子に影響します。
 母が摂取する栄養が足りなければ子への栄養の供給も足りなくなり、
 母がストレスを受ければ、ホルモンなどの代謝レベルで子へ影響します。

 母子が不可分であるほど、母の状態はそのまま子に転写します。この段階では情報はホルモンなど分子レベルのやりとりそのものだと考えられます。


   母の意識および無意識の状態が転写されます。
   母の<意識>も<無意識>も、子の<無意識>として形成されます。


●母からの<転写>という基本

 母の状態は子に転写されますが、そのまま全部が転写されるわけではありません。
 あるいは転写された領域がすべてではありません。

 母の状態がそのまま転写される部分と、そうでない部分の2つの領域が生じます。
 その2つの領域をもつ無意識あるいは無意識の2つの領域が生じるといえます。

 つまり2つの領域というギャップまたは<二重性>が無意識のなかに生じます。


●マイナスの<転写>という問題

 母がストレスを受けた場合、そのストレスによるマイナスの影響はそのまま子へマイナスの影響として転写されます。

 母から子に対してマイナスの影響があった場合、2つの問題が生じます。


   マイナスの傾向がそのまま転写させられる。
   マイナスに反発する力動が生じる可能性。


 母の影響は胎児の感受性とも関係があるので、実際には複雑です。
 サリドマイドのようにある時期の胎児に多大な異常をもたらすものも、その感受性がある時期以外では障害を起こさないものもあり、刻一刻と変化する胎児の感受性とそれへの影響は最終的にどのようなかたちになるかは重層的な非常に複雑な過程を経ています。


●<転写>の基本条件

 子の遺伝子は母と父の遺伝子を半分づつ継承してできています。
 母の状態が子へ転写するときに、子の遺伝子が母の遺伝子と全く同じであれば、同じ反応や、ある<状態>が同じように転写することが考えられます。
 しかし、実際は子の遺伝子の半分は父の遺伝子であり、母の状態やその転写に対する反応は、さまざまだと考えられます。

 父からの遺伝子は基本的な変数として考えられます。

2012年11月15日 (木)

根源的な世界との関係

●世界との関係

 乳胎児にとって<世界>と自己は不可分ですが、部分的に可分となり対象化することが可能になります。


  赤ちゃんは空腹になるとオッパイが欲しくて泣きます。
  泣くとオッパイがもらえて空腹が満たされます。
  これらが反復されてある認識が成立します。

  泣くとオッパイがもらえて空腹が満たされる、ということ。
  空腹はイヤだ、ということ。
  泣いている自分がいる、ということ。
  オッパイという他者がいる、ということ。


 「空腹」というのは自己に起る必然的な現象で、それは現象に表出された自分そのもののことです。この反復から抽象化された自己認識(自己同一性)が析出していきます。
 「泣く」というのは自己の行為であり、行為をとうして自己そのものも対象化され自己関係性が生成されていきます。
 「オッパイ」というのは他からやってくるものとして他者であり、対象化された世界の一部です。
 「泣くとオッパイがもらえる」というのは自己と世界との関係です。受動的な自己の振る舞いが生む結果と自分との因果関係であり、その点で自己(の行為)を規定するものです。やがて「泣いてオッパイをもらう」という能動的な自己関係性に再帰し、自己コントロール可能な意識が確立します。これらは<世界>における<自己>と<他者>の在り方を示すものです。

●2つの自意識

母という世界との関係は反復することにより2つの認識を確立していきます。


  反復から抽象化される自己同一性。
  反復から対象化される自己関係性。


 自己同一性は「ワタシはワタシ」という言葉で表せる即自的な自意識であり、自己関係性は「ワタシのワタシ」という言葉で表せる対自的な自意識です。
 自己同一性は抽象化された自意識であり、反復する再帰性における不変的な意識だといえます。自己関係性は対象化された自意識であり、反復し再帰するごとの変化の可能性と外部性の意識だといえます。


  ワタシはワタシ
         自己同一性・自己抽象性
         即自
         強度・概念・自己確定
         現実界
         知覚からの離脱

  ワタシのワタシ
         自己対象性・自己関係性
         対自
         場所・規範・指示決定
         象徴界
         ベクトル変容


●根源的な2つの問い

 これらの意識は心的な認識システムの重層的なファクターの根源的なものですが、その可塑的な変成により発達成長してからも常に表出する可能性があります。
 時に<ワタシそのもの>へあるいは<ワタシがいる世界>への根源的な問いとして意識上にのぼります。自己関係性は反復と再帰により対他意識、他者関係性へと拡張し発展します。この拡張性(拡張することの可能性)が人間と動物との違いであり、それは<遠隔対称性>として無限に拡張しうる観念の可能性そのものです。


  ワタシはダレ?
  ココはドコ?


 自己対象性・自己関係性から生成する意識で最も根源的な問いは以上の2つです。
 これらは自己への問いであるとともに世界と他者への根源的な問いにもなっています。
 ここから意識の根源的な対象性として認識の基本となる<規範>が生成します。


  自己関係性の対象性に外部から具体性を導入して形成される意識が<規範>です。
  自己同一性の抽象性に外部から具体性を導入して形成される意識が<概念>です。


 自己同一性は自己意識そのものから自己規定するものであり、自己関係性は自己意識の外部から自己規定するものです。
 「自己意識そのものから自己規定」するときの属性は時間性として把握されます。自己関係性における「自己意識の外部」というのは外部環境由来の主に感覚的受容による知覚情報が考えられ、その属性は基本的に空間性です。

2012年11月 9日 (金)

2つの認識の基礎

●世界と規範と概念

 環界である母や世界との関係を反復することで2つの認識が確立していきます。

 

反復から抽象化される<自己同一性>は、時空間意識の根源となります。抽象性そのものが<時間意識>の、自己への関係性そのものが<空間意識>の根源です。この時空間意識を基礎に<概念>が形成されていきます。反復による冪乗化は強度となります。「ワタシはワタシ」という自己限定に象徴される自己確定していく意識です。

 

反復から対象化される<自己関係性>は、意識の起点である場所=<いま、ここ>を形成します。この場所の前提には(そこに居る)<身体>があります。これらは認識の基本となる時空間性の生成であり、ここから<規範>が構成されていきます。<規範>は共同性が依拠するフレームとなります。「ワタシのワタシ」という指示決定された意識は自己分離のはじまりです。

 規範の初源となるのは<いま、ここ>であり<原生的疎外>の領域ですが、ベクトル変容した<純粋疎外>の領域では知覚から意志や理性まで、<自他不可分>の対象性(あらゆる可能性=時点ゼロ)として存在します。

 

母との分離、母との関係からの分離は世界の対象化であり、その自己分離と確立が成長です。

      最初の環境である母体、
      最初の他者である母、
      最初の社会である母との関係、
      そして最初の物語である母との物語。

 そこには、自己にとって<母=世界>という環界からの規範化と、それへの<自己の対応>が確定していく過程があります。

 <自己の対応>の基本は認識することであり、対象の概念化です。
 対象である<母=世界>との反復される関係から、対象は抽象化されて概念化します。
 並行して対象は命名されていきます。
 規範化の前提には形態認識があります。<いま、ここ>が場所であり、前提となる身体とともにそれらは空間性です。これらの空間性を識知する形態認識がリアルのはじめにあります。

●規範と概念と言語

 言語は心的な<概念>と<規範>が同致して生成します。

   規範
   外感覚による指示決定の情報が身体化?

   概念
   指示決定の情報を思念により観念化?

 概念は規範によって表出されて、はじめて言語化します。
 言語の規範というのは、音韻、韻律、文法などの共同性です。
 表現としての言語は表出されないかぎり存在しません。

 リアルな世界での統御されたトータルな認識としては、これらは総合されているので峻別されて認識されるものではありません。ただ、あらゆる異常や病的といったものは、これらの微分されたどこかに、その理由を発見できると考えられます。

2012年10月19日 (金)

最初の2つの世界/物語がはじまるトコ

●最初の世界

 受精し受胎し生命が始まります。その時、生命にとってはその環境が世界になります。
 そして、その環境世界のなかで自分の位置(=場所)を確認しています。

 原始的な生命体でも自己の位置を確認しています。重力、地磁気、太陽光をはじめ潮の干満に代表される引力による変化などを感じ取って自分の位置を確定し、自分の場を確保します。自然環境は周期的な変化を繰り返しているので、自己の位置確認も断えず定期的・恒常的に行なわれてます。この反復は生命の基本的な行為だといえます。


  人間の個体の場合は胎内環境が<世界>です。
  この胎内環境<世界>は絶えず変化します。
  世界の<変化>に対して生命は<反復>する認識で対応しています。


 胎内環境という<世界>の変化は、つまり母体の心身の変化です。母体の栄養摂取の度合いや健康状態、精神的なストレスまで、母体に生じるすべてのデキゴトが、必ず何らかの変化を<世界>におこします。そして、この<世界>の変化が個体の属性を決定していきます。たとえばサリドマイドなどの薬害もそうです。妊娠中のある時期に胎児はサリドマイドに対する感受性が高くなるために、その時期に母体がサリドマイドを摂取していると発達不全が起こります。逆にその時期以外では悪影響がないことも確認されています。

 個体はあるタイミングで母体という<世界>から決定的な影響を受けているワケです。


●世界である母

 個体は<世界>との関係のなかで自分を確認します。

 そこに自分を知り(自己抽象→自己対象)、母体(世界≧対象)を知るという二つの認識が生じます。

 原初は<自己>と<世界>とは不可分です。<自他不可分>の状態です。
 この自らと対象が不可分なのが<自他不可分>の状態であり、システム論的には位相性の混乱です。
 生命システムとして定義不能のこの状態を『心的現象論序説』では<純粋疎外>と定義しています。
 また生命の生きているということそのものが<原生的疎外>という状態です。この<原生的疎外>と<純粋疎外>の差異が<観念≧意識>だと考えられます。

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